変態文学大学生です。
名前を奪われて(凍結)はや半年が経ちましたが、今日も元気に世界が有害と叫ぶ本を研究しています。
世界がロリ漫画を全力で拒む今、全力でロリ漫画の話をしよう。
そのために自分でサーバー契約してサイト持ってんですもん。
ということで、ずっと昔から全巻揃えたら絶対に書こうと思っていた、大好きな大好きな大好きな大好きな町田ひらく先生のエロ漫画についての記事です。
エロ度、辛い度の個人的な指標をつけたので好みに合わせて読んでみてネ
※本当は全単行本感想の予定でしたが、諸事情で突如課題ラッシュに見舞われているため一旦10選という非常に生意気な形での公開となります。あとで残り6冊について追記します。
※指標について
エロ度←個人的な実用度というよりは、エロ描写が多いかどうかです
辛い度←罪の重さは等しいけれど、読後感としての辛さです
※暴力行為を推奨するものではありません。あくまで「表現上」のお話。
『きんしされたあそび』 一水社
エロ度:★★★★★
辛い度:★★
好きな言葉↓
物語の冒頭はこうだ「フェラチオ最初にやった女って神さまの目をスゲェ気にしたんだろうな」
町田ひらく先生の1冊目の単行本です。
卑猥な絵のモデルをさせられ、それを一枚10円で同級生達に売られ、紙越しの視線に妙な感覚を覚える少女の話「スタジオ”A”によろしく」
お耽美なソファに毅然と腰掛ける少女に官能小説を朗読させ、自分は無抵抗状態でただ聞いていると射精するという特殊性癖を患った先生の話「腹切少女」
悪ふざけが高じて間違いを犯してしまった先生が太陽の光に照らされ犯罪者である自らを受け入れる話「太陽賛歌」
などなど、どれもこれも何度読んでも新鮮な読後感のある作品ばかりです。
でも最後の収録作は「さようならお陽さま」なんだよ、単行本においての「並び」の大切さを知ったのはは町田ひらく先生の本から…
悪い大人役として「町田」と命名された男が出て来るのもお茶目で素敵。
『卒業式は裸で』 一水社
エロ度:★★★★★
辛い度:★
好きな言葉↓
この中に精液を出す為なら、男はドレイにでも何でもなるんだ。
いろんな記事に登場させている言わずもがな名作単行本です。
スーパー家庭教師内藤先生が少女たちの純潔を汚した罪滅ぼしにスーパーキャリアを約束してくれるシリーズ。
初めて読んだ町田先生の作品であり、その詩的な性欲の昇華に目が眩んだ思い出の一冊です。
過剰に「このフィクションは危険だ!」と騒ぎ立て、フィクションさえ消せばどうにかなるとでも言いたげな世界で、内藤先生は、
「フィクションの嫌いな所はてっとり早く犯して致命傷を与えないことだ」
と言い放ち、フィクションよりも恐ろしい現実から目を背けるなと思わせてくれます。
「勇気と意志を持って/知識を奪」う決意を固めた少女達の、過酷な運命の中で一層強く輝く美しい眼差し。
女性にオススメエロ漫画を勧められたら必ずと言っていいほどコレを推してきたし、その度ごとにめちゃくちゃ喜ばれています。
『幻覚小節』 一水社
エロ度:★★★★★
辛い度:★★
好きな言葉↓
テキスト読んで習った正義か 臓腑をえぐられ勝ち得た正義か
ロリコン男達の人生や感情にも焦点が当てられた作品が多い単行本。
レイプされた少女に便乗して自分も犯そうとするも、タイミングを失って宇宙人のふりをしてあげるホームレスの話「惑星間夜想曲」
自殺しようとしたクラスメイトの少年を、「宮沢賢治を読んでいたから」という理由でセックスで引き留めた少女の話「美女とのけもの」
自殺しようとしているロリコンが地震で止まったエレベーターで謎の少女と念願のセックスを遂げる話「地上∞階美少女売場」
さらに、私が町田先生作品の中で最も好きな、理性では拒みながらも破滅へのステップを踏んでいく話「蜃気楼回線」が収録されています。
エゴなしで生きることなどできない人という生き物のもつ道徳が、いかにちっぽけで脆く、普遍性にかけるものかを感じさせます。
『green-out』 一水社
エロ度:★★★★
辛い度:★★★
好きな言葉↓
SEXすると病気がうつるぞ “命”って名の病気がな
ロリ漫画でありながら、新聞の書評欄に載ったという伝説の単行本です。
少女達への悪戯をおさめたカメラを落としたストレスでおかしくなっていく男の話「GUNと標的」
失踪した幼馴染の少女の面影を忘れられず、抜け殻のような人生を過ごす男が、自分の業を通してやっと事件に折り合いをつけられる話「青空の十三回忌」
坊主に犯される絶望の日常を送る少女が、豊かなお花ばたけを持つ男に愛される友達に嫉妬を抱き、悲劇を起こす「お花ばたけ王朝期」
など、コレまた業の深い話ばかりで濃密な単行本です。
「好きな言葉」の出てくる作品は、貴重なやおい作品でもあり、必見。
『Alice Brand』 コアマガジン
エロ度:★★★
辛い度:★
好きな言葉:そうして地獄のイメージだけが薄められてゆく
夢から着想を得て物語を書くことが多いとよくあとがきで述べている町田先生ですが、この単行本は幻想的で夢を見ているような話が多いです。
辛そうな少女はあまり見たくない、エロすぎるのは怖いという人向けかも。
中でも好きなのが、一枚の絵を鋭い観察眼をもって眺める少女からはじまる話「アンフェール藝術院」
「人々は個の時代既に想像力を捨ててリアルを貪り始めていたのか
そうして地獄のイメージだけが薄められてゆく」
という言葉が出てきます。
「罪」を描くのを禁止しろと騒ぐ世界ですが、表現上の「罪」が消えたところで本当の「罪」は消えません。
それどころか、「罪」へのイメージだけが薄められていく。
ネットを介した誹謗中傷の殺傷能力にも想像の及ばない人たちで溢れる世界で、性の暴力が不可視化された暁にはどんなことが起こるんでしょうね。
電子化してない単行本だけど『アンフェール藝術院』単話はあるヨ
『町田ホテル』 太田出版
エロ度:★★★★
辛い度:★★★
好きな言葉:犬猫…虫でさえできる事がナゼ僕にできない
この単行本が大好きで大好きで、『<エロマンガの読み方>がわかる本7 ロリ特集』にて、こちらの単行本の長文書評を寄稿させていただいたほどです。
特に、一つ目に収録の「正直者の誕生日」は、繁殖を極度に拒む私が町田先生作品に異様に惹かれる理由が詰まった作品でした。
人間は良心なんてものをもっているために生物としては虫以下の最下層なんだけれども、「生き残る」という生物ただ一つの本能から外れる選択肢をもつ美しい生物。
ロリコンと見れば気が狂ったように糾弾してくる奴らだって全然無罪じゃない。
みんな無罪じゃないなら、罪を見つめられる人の方がよくないかしら。
その他にも、彫刻家の娘として生まれたために裸体を美術品としてさらされるハメになった少女の話「青銅の味」
借金返済のために娘を売った父親のその後の話「少女法」など、家族関係に切り込んだ話が多めでヘビーな感じです。
※すまんこれも電子化してない
書評が気になる人はこっち(半額なう)
『黄泉のマチ』 茜新社
エロ度:★★★★
辛い度:★★★★★
好きな言葉↓
「ごめん?どれに?」
LOで長く連載していたシリーズ「たんぽぽの卵」の前半+2つの短編を収めた単行本です。
ということで、自動的に後編を収めた『たんぽぽのまつり』という単行本もセットで紹介することになります。すまん。
大きなお友達の夢と希望、小さなお友達の借金と絶望を乗せたバスが、いろんな世界を見せてくれる話です。
『卒業式は裸で』の少女達は、「奪われたからには奪うんだ」という意志を固めて巣立っていきますが、こちらの少女達は真逆です。
ロリコンたちに宿題をやってもらったりしちゃって、未来までとことん奪われていく。
「ごめん」と謝る大人に、少女が「ごめん?どれに?」と言い放つシーンなんか見ていられないくらいしんどい。
謝るって都合のいい行為ですよね。でも犯してしまったことに対してそれ以外に私たちはどうすることもできない。
町田先生の作品の中では私はこの「たんぽぽの卵」が一番しんどいかもしれない。
それでも最後まで読むと、生きる気持ちになるのです。
『少婦八景』茜新社
エロ度:★★★★
辛い度:★★★★
好きな言葉↓
アタシは死ななかったよ
それぞれの名前がややお茶目ですがヘビーめな作品も多い単行本です。
トレイの花子さんの噂話がモチーフの「花子と太郎の夏休み」なんかもヘビーな描写がありますが、その中にも、町田先生作品によく出てくる「女の強さ」みたいなものが描かれています。
ロリ犯罪で懲役10年の刑期を終えて出てきた男にAVのオファーをする話「サイコサイコ動画」は、「性的指向」としてのロリコンを描いたなんとも複雑な気持ちになる作品。
冗談抜きに私はオジサンでしか興奮できないオジコンですが、その対象がたまたま合法だったからフツーに生きてられるというだけで…
対象がたまたま違法だった場合、どうしたらイイんでしょうね。
「お父さんなヤッたぞっ!」「ゴーカンしてきたぞっ!」
という戦慄の宣言からはじまる話「大きな何かの木の下で」も、引きこもりのロリコン息子、それを抱えた父に焦点が当てられるコレまたぐったりする作品です。
『ヌキグルミの絵本』 茜新社
エロ度:★★★★
辛い度:★★★★
好きな言葉:レイプに「未遂」という概念が、僕の中には在りません。(町田先生の解説より)
エロ漫画が罪なのではなく、我々の偏見が罪なのだ、と思わされる単行本です。
レイプされた少女の病室の隣で、「うちの子はかろうじて膣を犯されなかった神様ありがとう」と泣きじゃくるお母さんがグロテスクな「マアだだよ」
それに対する町田先生の解説を好きな言葉に選びました。
少女に対する性犯罪だけに過剰に焦点を当てる人は他の性犯罪を軽視している傾向にあるのですが、そういうふうに、いろんな「罪」を程度の差で捉えている人って多いんじゃないでしょうか。
そういう自分の中のバイアス=罪な部分に気づかせてくれるのも町田先生の作品なのです。
ロリエロ漫画家の父をもつ娘が、「どうせお父さんにヤられてるんだろ」という偏見を持った周囲の人々ほとんどに犯される話「紙の襞」なんかも恐ろしい。
恐ろしいのはエロ漫画じゃない、偏見に気づけない我々だ。
『小さい躰に白い蔭』 茜新社
エロ度:★★★★
辛い度:★★★★★
好きな言葉↓
私は今 餌みたいに喰われているのだ 食べても食べても減らない餌なのだ
最新刊です。
前・中・後編で構成される「ほほえみ地童」は、ネジの飛んだ土地の権力者に人身御供的にあてがわれる少女の話です。
「カンニン」って何する事ですか?
「コラエテ」って何する事ですか?
「コラエ」なかったら私はどうなりますか?
この大人はコラエなくてイイのですか?
という少女の心理描写が出てくるのですが、なんとも痛ましい真実。
性欲すらまともにコラエることができない大人を前に、無力な少女はひたすらその仕打ちをコラエるしかないわけです。
私たちは、大人になればなるほど、いろんなことから逃げる手段を与えられていく。
家が嫌なら一人暮らしすればいい、性欲が溜まれば風俗に行けばいい、嫌なことがあればお酒を飲んで気分を変えることもできる、何よりどこに頼れば解決できるかが見えてくる。
大人になればなるほどコラエがきかなくなるなんて、なんと哀れな生き物でしょう…
終わりに
これは私の持論ですし、研究していきたいことの一つでもありますが、「かわいそう」と「かわいい」は両立するし、「ひどい」と「えっち」も両立するんですよ。
コレは文学だ!だから変態ではない!という話ではない。
文学でありながら、変態である。
少女の運命に目を塞ぎたくなりつつ、それがとてもエロティックである。
どっちもあるから好きなんじゃい。
そういう町田ひらく先生の作品への愛をただただ綴った記事でした。
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